2013-01-01から1年間の記事一覧
これが物心ついた瞬間というのだろうか。 気がつくと廃墟に寝そべっていた。冷たいコンクリートとざらざらした砂が頬を腫れさせる。 今まで何をしていたか、まったく思い出せない。 とりあえず、起き上がる。喉がゴロゴロ動くように、勝手に低い声がもれた。…
頬に少ない土がへばりつき、不愉快きまわりない。少しの間、意識を失っていたのか、あたりはじんわりと暗くなっていた。ポケットをまさぐるが、時計は出てこない。先週にマリアに取られたのを思い出し、ため息をつく。 リディアはぶるぶるとせわしなく震える…
「死神狩り・・・恐ろしいことをよく言うなお前は」 「リディアこそ俺のことお前って言ってるじゃんー」 子供のように両頬を膨らませてヒョウキは悪態をついた。 「冗談でも死神を殺せるなど私の前で言うんじゃない」 「冗談なんかじゃないよ、リディアちゃ…
「まだ夢みたいだ」 ニーナの横でクリスは虚ろに呟いた。ひとり暮らしのクリスはアジトに泊まってニーナから銃の扱い方を教わることになった。キティはホテルに帰り、離れるわけにはいかないとサリーもついて行ってしまった。 ニーナと二人きりのアジトは広…
次の日、教室で起きた火が予想以上に燃え広がり、本日を含む一週間、クリスの通っていたクラスが学級閉鎖になった事を遅くもサリーから伝えられた。喜ぶべきか喜ばざるべきか。 「クリス、準備できたかしら?」 クリスの病室に今か今かと待ち飽きたサリーと…
キティは数学教師の腕に駆け寄る。教師が倒れて動かなくなると教室から逃げ出す者、ビクビクと震えるだけで逃げ出せない者、悲鳴を上げる者。クリスはとっさにロッカーの中から実験用のマッチを掴み出し、火をおこして床に放った。 「みんな!!先生が、火を…
「いいかい、キティ。今から調べるからね。キーワードをくれないか?」 クリスは小さな自分部屋として使っているアパートにキティを呼び出していた。ノートを大事そうに抱えたキティが微笑んで頷く。クリスの部屋は白いザラザラした壁にカラフルな絵の具がこ…
ご機嫌にノートを抱き、キティは自宅に帰った。キャサリンのノートを引き取ることができ、足取りも軽くなる。そのままの勢いで叔母の家のドアの鍵をポケットから取り出し、鍵穴に差し込んだ。父親がなくなってからは唯一の家族の叔母の家に住んでいる。 軽い…
病室に入り、一息入れると僕はなぜ花束を持って、同性の患者と向き合っているのかがわからなくなってきた。 「入院するぐらいの大事、しでかしたの?」 「さぁ。よくわからないよ」 クリス・フロストフェローは学校で同じクラスである友達、ハル・スカイハー…